今回は、日本の半導体産業に新たな希望をもたらす企業、ラピダス株式会社について解説していきます。
ラピダスの誕生とビジョン
2022年8月、東京都千代田区に設立されたラピダスは、日本の半導体不足を解消し、国内生産体制を強化することを目指しています。ラピダスは、日本の主要企業8社の支援を受け、政府からも大規模な補助を得て、2nm世代プロセス製品の開発・量産に挑戦しています。 出資した企業は、キオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT、三菱UFJ銀行で、 ラピダスの設立に総額73億円を出資し、先端半導体の国産化に向けた取り組みを支援しています。 政府からは、2022年度第2次補正予算から2600億円の補助が決定されており、合計で1兆円近くの支援を受けています。
技術開発と産業貢献
ラピダスは、IBMとの提携を通じて先端半導体の製造技術を獲得し、北海道千歳市に第一工場を設置。2025年4月までに工場建設を完了し、試作プロセスの稼働を目指しています。これにより、日本の経済安全保障上重要な物資の国産化に貢献することが期待されています。
エヌビディアやTSMCとの競合
ラピダスは、AI半導体市場でエヌビディアと競合する可能性がありますが、数量を追わず製造のスピードを重視する中規模ファウンドリー戦略を採用しています。TSMCとは直接競合を避け、2027年の量産を目指し、2025年には試作を始める計画です。これにより、ラピダスは市場に新たな選択肢を提供することになります。
未来への展望
ラピダスは、省エネルギーかつ高性能な製品の提供を目指し、半導体産業を担う人材の育成にも力を入れています。今後の上場を含め、事業展開によって日本の半導体産業に大きな影響を与えることが期待されています。
現在、ラピダスへの懸念点
技術的なハードル ラピダスは2nm世代の半導体を製造する計画を進めていますが、この技術的な目標を達成することは非常に困難であり、業界の常識からすると、ハードルはかなり高いとの見方もあります。
資金不足 日本政府はラピダスに700億円を拠出すると発表しましたが、業界トップのTSMCの投資額は年間4兆円を超えており、量産化に必要とされる資金は数兆円と言われています。日本政府が2027年まで資金を提供し続けられるかは不確実です。
顧客の不在 ラピダスはファンドリー企業であり、半導体の設計は別の企業が行うことになりますが、現在、最先端プロセスを用いる半導体を設計している企業は日本におらず、最先端プロセスを用いたチップを搭載するような機器もないという問題があります。
まとめ
ラピダス株式会社は、日本の半導体産業の再興を目指し、国内外の大手企業との連携を通じて、その地位を確立しようとしています。これからもラピダスの動向に注目していきましょう。